急性胃炎
概要
何らかの原因によって胃の粘膜に炎症が起こり、粘膜の浮腫、発赤、びらんの形成が短時間に引き起こされた状態をいいます。
男性に多くみられます(約2.5倍)。
その原因により外因性急性胃炎と内因性急性胃炎の2つに大別されます。
原因
外因性急性胃炎
食べ物や飲み物、薬品、ストレスなど外からの刺激が原因となって起こるものをいいます。
そのうち最も多い原因は暴飲暴食で、酒の飲み過ぎが原因となることが多いようです。
そのほかにはコーヒー、緑茶(意外とカフェインの含有量は多い)、からし、熱い飲み物などや腐ったものを摂取したため起こることがあります。
薬品によるものとしては、鎮痛剤、ステロイド剤、抗生物質、強心剤、経口糖尿病薬などがあげられます。
薬剤によるものは60歳代にピークがみられ、加齢に伴う胃粘膜の抵抗性の減弱あるいは各種基礎疾患の増加によるものと考えられます。
飲んではいけないもの(強酸、強アルカリ、腐食物質など)を誤って飲んだ場合には急性腐食性胃炎を起こします。
内因性急性胃炎
風邪やインフルエンザなど急性感染症などに合併して起こる急性胃炎のことをいいます。
アレルギー性胃炎を内因性の1つとすることもあるようです。
アレルゲン(アレルギー反応を起こさせる原因物質)を食べた時に起こる急性胃炎のことです。
症状
急激に症状が発現するのが特徴です。
胃部不快感、心窩(しんか:みぞおち)部痛が最も多く、食欲不振、悪心(おしん:むかつき)、胸やけ、げっぷ、嘔吐(おうと)、吐血(とけつ)、下血(げけつ)がみられます。
時に、全身倦怠感や頭痛があることもあります。食中毒の場合などで腸に炎症が及べば胃腸炎となり下痢を起こすこともあります。
このような場合の下痢は、有害物質を排除する自己防衛的生理現象ですので、みだりに止瀉(ししゃ)薬を使用すべきでなく、脱水、電解質異常等に対する対症療法が大事です。
高齢者では腹痛などを訴えず突然の吐下血で発症することがあります。
治療法
一般療法
治療の原則は安静と誘因の除去です。
安静とは胃の安静のことです。薬物性の場合は原因薬剤を中止するのみで軽快することもあります。
原因薬剤を中止できない場合でも減量は必要です。
食事は、刺激物や肉類などの胃排泄(はいせつ)を遅延(ちえん)させるものは避けて、消化のよいものをとるようにして下さい。
出血を伴う場合は絶食の上、点滴治療が必要になります。
薬物療法
胃・十二指腸潰瘍の治療に準じて攻撃因子抑制薬と防御因子増強薬を組み合わせて行います。
鎮痛剤(NSAID)によるものはプロスタグランジン製剤が有用です。
患者さんの不安を取り除くため精神安定薬を併用する場合もあります。
出血を伴う場合は止血剤の全身投与や胃内注入、輸血などを行うこともあります(胃潰瘍の項を参照にして下さい)。
内視鏡治療
内視鏡を用いた直接胃内への止血剤の散布や、止血操作が必要となることがあります。
外科処置
上記の治療でも止血できない場合、胃切除を伴う手術が必要となります。